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  • POPこそがBiSの直系にして本流だーーカミヤサキ活動休止発表のUNITワンマンを観た

     POPのワンマンライブで、カミヤサキが「私からお知らせがあります」と言ったとき、アイドルのライブでの「お約束」である「やめないでー!」という声が会場から起こった。しかし、彼女が以下の発言をすると、代官山UNITの場内は凍てついたかのように完全に静まり返ることになった。


    (関連:BiS解散から1年、元メンバーたちの「今」は? 宗像明将が徹底追跡レポート)


     「私は、この代官山UNITをもって無期限活動休止と、事務所からの判断でなります。イベントの禁止事項を遵守できなかったこと、マネージメントからの指示に従えなかったことが理由です。」


     カミヤサキが「楽しい雰囲気を壊してすみません」と明るく振る舞っても、突然の発表に場内は静まり返っていた。POPのリーダーのカミヤサキが突然無期限活動休止に入る衝撃は、それほど大きなものだったのだ。


     2015年8月9日に開催されたPOPのファーストワンマンライブ。それは、前身であるカミヤサキ(元BiS)とミズタマリ(いずこねこ)によるプラニメが1月10日に開催した代官山UNITでのワンマンライブに、POPとして再チャレンジする意味もあったのかもしれない。5月31日にミズタマリが脱退し、6月1日に加入が発表された新メンバー、イヌカイマアヤ、ヤママチミキ、シグサワアオ、ユメノユアとともにカミヤサキが再び臨んだ代官山UNITだった。


     その新メンバーが発表された6月1日には、プラニメが“Period of Plastic 2 Mercy” 、正式名称「POP」に改称されることも発表された。ふだんは「ピオピ」とも呼ばれる。


     POPは、6月28日に開催された「ギュウ農フェスvol.3 羽田空港アイドルフライトだっぺ!」で初ライブを行った。私は7月2日に初めてPOPのライブを見たが、BiSの派生グループとしては解散後約1年を経て遂に生まれた最高のグループだと直感した。それは私だけの感覚ではなかったはずだ。POPのライブは回を重ねるたびに称賛を浴び、BiS解散後にアイドル現場から遠ざかっていた元研究員(元BiSファンの総称)すら再結集させていった。耳の早い他の界隈のヲタも続々と集まり、ほんの短期間に、目に見えてファンの層は厚くなっていった。それは驚くべき勢いだった。


     忘れがたいのは、7月18日に新宿RUIDO K4で開催されたライブだ。プラニメからPOPになった後、POPはいわゆる地下アイドルイベントに頻繁に出演していた。その中でもこの日は、会場内が異様な熱気に包まれ、EDMなのにウォール・オブ・デスが自然発生するほどの狂気と馬鹿馬鹿しさが渦巻いていた。終演後に地上に出ると、その日のあまりの盛りあがりに「POPのファンの総称は『研究員』でいいのではないか」という話題すら出たものだ。


     そう、5人編成に生まれ変わったPOPは、最初期から5人時代までのBiSを髣髴とさせるものがあった。カミヤサキのもとに集まった、彼女よりも若いメンバーたち。しかも、まったくキャラクターに統一性がなく凸凹しているのだが、それが不思議とひとつのグループとしてのバラエティを生み出していた。なかなか計算しても作り出せない掛け算のマジックだ。


     ふだんはあまり感情を表に出さないようでいて生誕祭ではボロ泣きするイヌカイマアヤ、アイドル志望ではなかったのにカミヤサキを慕うあまりメンバーになったヤママチミキ、最年少の高校生ながらヴォーカルに強い魅力を感じさせるシグサワアオ、そして「病みキャラ」ゆえに一部の病んでいる(というか狂っている)ファンを獲得しているユメノユア。彼女たちとカミヤサキによるPOPは、ライブを開始した直後の試行錯誤を経て、やがて隙だらけながらもタフで、常にユーモアも感じさせるグループへと一気に成長した。


     そもそも、カミヤサキのもとに集った新メンバー4人、という時点でどこかが面白い。まるで少年漫画のようだ。これはページをめくるのが楽しみな珍道中が始まるぞ……と思っている矢先に事件は起きた。


     8月1日、2日に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」。その初日である8月1日の夜の「FESTIVAL STAGE」で何らかの事案が発生したことによって、POPは翌日8月2日の出演が中止となった。私はその現場を見ていない。ただ、同じく8月1日の日中の「SKY STAGE」でのPOPのライブは、観客の熱気にメンバーが呼応した素晴らしいライブだった。ファンの熱狂がさらに激しかったという「FESTIVAL STAGE」では、POPがファンに呼応しすぎたのだろうか……と想像した。私が知るPOPは極めて真摯なパフォーマーだ。それはイベントの枠内では裏目に出ることもあるだろう。


     なお、初日の夜には、同じ事務所のBiSHの2日目の出演もキャンセルされた。ここでは憶測は書かない。


     それから1週間。8月3日のイヌカイマアヤ生誕祭や、8月4日のPOPのファースト・アルバム「P.O.P」のリリースを経て、代官山UNITでのワンマンライブを迎えることになった。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」でのトラブルはあったが、現場はアルバムのリリース・イベントが盛りあがり、うまく軌道に乗った印象があった。代官山UNITのチケットは見事にソールドアウト。すべてがうまくいっている、と誰もが思っていた。


     会場に入ると、POPは松隈ケンタのサウンド・プロデュースのもとEDMを基調にしているのに、ビゼーの「カルメン組曲第2番 第2曲 ハバネラ」、ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」、そして開演直前にはラヴェルの「ボレロ」と、なぜかクラシックばかりが流されていた。


     1曲目は「UNIT」。プラニメ時代の楽曲ではあるが、代官山UNITのステージに立ったPOPにもふさわしい楽曲だ。肩を組んで歌うメンバーたちに合わせて、フロアのファンたちも肩を組んで揺れていた。「who am I?」からは激しいMIXや多数のリフトが起きて一気に盛りあがる。POPの楽曲の中でも特にポップな「3rd FLOOR BOYFRIEND」では、ファンも大合唱をしていた。まるでアンセムのようだ。クラウドサーフも始まった。


     「Daydream」ではもうリフトの嵐だ。最近はEspeciaのプロデューサーとして活躍するSchtein&Longerが作編曲した「Lonely lonely lonely」では、同じくEDMのSTEREO JAPANの現場から導入された「パーティーピーポー!」という掛け声がフロアに響き、フロアの気温が確実に上昇した。「fly away」や「NEON」では熱いクラップが起き、「Letter」ではオイコールとMIXが続けて起きた。


     アルバム「P.O.P」の新曲「pretty pretty good」は、松隈ケンタ作曲、井口イチロウ編曲による、EDMとロックが絶妙にブレンドされたサウンドだ。楽曲が始まると、カミヤサキが感情を爆発させるかのように「いくよ!」と叫んだ。この楽曲のサビには、BiSの「nerve」や「primal.」の振り付けが挿入されており、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」のSKY STAGEでの初披露を見たときには、POPこそがBiSの直系にして本流だと確信したものだ。メンバーが他のメンバーをリフトするのも、ファンの行為を取り入れているアイデアがユニークだ。


     そしてプラニメ時代からの代表曲「Plastic 2 mercy」へ。ヤママチミキが不意にカミヤサキに抱きついているのを見た。この「Plastic 2 mercy」は3回繰り返されたのだが、オケがDJミックスのようにつなげられている趣向だった。つまり、絶え間なく3回繰り返されたのだ。2回目の「Plastic 2 mercy」では、プラニメを脱退したミズタマリがフロアでリフトされ、彼女のもとへとカミヤサキがダイヴした。ドラマティックすぎる光景だ。3回目の「Plastic 2 mercy」では、ユメノユアがダイヴして、ステージに戻ると「君が いない未来 見ない未来 ありえない」という歌詞の「ありえない」を叫ぶように歌った。カミヤサキは、スウェットスーツの敗れた部分を笑顔でフロアに投げた。本編はここで終了。12曲ノンストップ構成のステージだった。


     アンコールが沸き起こったが、しかしなかなかメンバーが再登場しない。


     私は本編の最中、メンバーの自己紹介がないことが気になっていた。「3rd FLOOR BOYFRIEND」の間奏中に「キング・オブ・ポジティヴ、POPです」という挨拶はあったが、それだけだ。自己紹介がないことには、2014年7月8日のBiSの解散ライブを連想した。アンコールの最中、微妙な不安を胸に抱えていた。


     本編の終了から15分は経っていただろうか。長く激しいアンコールの声に応え、POPはTシャツに着替えて再登場した。


     そして、まず12月にPOPの初のシングルがリリースされることが発表されて歓声が起きた。


     それに続いたのが、冒頭に書いたカミヤサキの無期限活動休止の発表だった。彼女が明るく話しても、あまりにも突然のことにフロアは静まったままだ。カミヤサキが新メンバーを見ながら、「実際にとても辛い思いをするのはこの4人だと思うんですよね、ぜひこの4人も支えてあげてください」と言うと、彼女の心情をくんだファンから拍手が起きた。カミヤサキが「必ず戻ってきますので、みなさんこれからもPOPをよろしくお願いします!」と叫ぶように言うと、他のメンバーたちは今にも泣き崩れそうだった。ヤママチミキが涙でうまく話せないところで、ようやく会場からは笑いが起きた。彼女が「サキちゃんを一緒に待ってください」と語ると、再び拍手が起きた。


     カミヤサキは不器用な人だ。しかし愚直なまでに誠実なパフォーマーだ。そのことだけは、ここに明記しておきたい。


     「too misery」は、涙で歌もボロボロだったが、そんなPOPの姿もまぶしかった。「盗られそう」では、カミヤサキの激しいヘッドバンギングをしかと見届けた。


     そして最後は、この日2回目の「pretty pretty good」。メンバー全員がフロアにダイヴし、ステージ上に誰もいない状態にまでなった。


     うまくダイヴできずに一度はステージに戻ったシグサワアオが、それでも再びフロアにダイヴした。その彼女の姿は、これからのPOPを想像するにあたって心強いものだった。


     思い出してほしい。POPは6月28日に初ステージを経験したばかりのグループなのだ。その彼女たちが、たった約1カ月でこれほど見事にファンに呼応できるグループに急成長した。モンスターグループと断言しても差し支えない。


     POPは当面、イヌカイマアヤ、ヤママチミキ、シグサワアオ、ユメノユアの4人だけでライブ活動をすることになる。カミヤサキは無期限活動休止となったが、なんとか12月のシングルまでには復活してほしいと切に願う。POPがこの先どうなるかはわからないが、彼女たちを失うことはアイドルシーンにおける重大な文化的損失だ。


     だからカミヤサキが復活するまでのPOPの現場は私たちが守るしかない。突然カミヤサキを失ったメンバーたちも同じことを考えているはずだ。あなたも現場に来れば、アイドルとEDMと熱狂とユーモアが交錯するPOPのステージを目にすることができるはずだ。


     カミヤサキは、ワンマンライブでの特典会終了後の挨拶で、以下のような主旨の発言をした。


     「脱退でも卒業でもないし活動休止なので、1日でも早く戻ってこられるように頑張るので、POPをよろしくお願いします。皆さんに出会えて本当に幸せです。これからもよろしくお願いします。」


     ここから先のPOPのストーリーを見られるかどうかは、残されたメンバーとファンが生み出す現場の熱量にかかっているのではないだろうか。ここで終わるにはあまりにも惜しい。そう痛感したのがPOPのファーストワンマンライブだった。(宗像明将)


    ■セットリスト
    1.UNIT
    2,who am I?
    3.3rd FLOOR BOYFRIEND
    4,Daydream
    5.Lonely lonely lonely
    6.fly away
    7.NEON
    8.Letter
    9.pretty pretty good
    10.Plastic 2 mercy
    11.Plastic 2 mercy
    12.Plastic 2 mercy
    <アンコール>
    13.too misery
    14.盗られそう
    15.pretty pretty good

    ■POP「pretty pretty good」PV
    https://www.youtube.com/watch?v=K07xAFm7x-Y

    ■POP公式サイト
    http://www.pop2m.com/

    2015.08.11

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