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  • 最新型音楽ゲーム『CROSS×BEATS』はどう誕生した?プロデューサー・NAOKI MAEDAが原体験とともにそのキャリアを辿る(前編)
    株式会社カプコンが手掛ける音楽ゲーム『crossbeats REV.』。「musicるTV」の人気コーナー「ミリオン連発音楽作家塾」の第7弾では、同作とコラボし、新たな逸材を発掘するための企画を放送してきた。これまでMusic Factory Tokyoでは同作家塾の受講生などを募集してきたが、今回は『crossbeats REV.』のプロデューサーであるNAOKI MAEDAを直撃。前編では彼の音楽的原体験を紐解くとともに、彼が『CROSS×BEATS』シリーズを立ち上げた理由や、音楽ゲームに適した楽曲について語ってもらった。
    取材・文:中村拓海
    写真:竹内洋平


    ――今回は『CROSS×BEATS』のお話も伺いつつ、NAOKIさんのキャリアを掘り下げられればと思います。まずは最初期の音楽体験から聞かせてください。

    NAOKI:
    4歳から音楽教室でクラシックピアノとエレクトーンを習っていました。ただ、そのうちに楽譜通りに弾くよりアレンジして自分の曲になったものを弾く方が楽しくなってきて。先生に怒られつつも中学生まではレッスンに通い、中学3年生のときにシンセサイザーに出会ったんです。当時はデュラン・デュランなどの“ニューロマ”バンドが好きで、ニック・ローズのファンでもありました。彼がメインで使用していたシンセが『JUPITER-8』(Roland)で、すごく欲しかったのですが、当時は100万くらいでとても手が出るものじゃなくて。だから自分でも買える価格帯で販売していた『JX-8P』(Roland)で、なんちゃってニック・ローズを演じていました(笑)。

    ――なるほど(笑)。なぜこの時期にニューロマンティック系のバンドにハマったのでしょうか。

    NAOKI:
    多感な年ごろだったので、クラシックをやっていることが“ひ弱”みたいな気持ちになってきたというか……。あと、周辺でバンドブームが巻き起こっていたことも大きくて、キーボードのいないロックバンドが多かったから、自分も鍵盤をやめてボーカリストとしてバンド活動をしていたこともあります。そのままロック精神で「このままプロになってやるぞ」と思ってたんですけど、親に「せめて大学くらいは行け」と泣きつかれまして(笑)。大阪芸術大学の音楽学科にピアノコースがあったので、そこを受けて合格しました。

    ――公私ともに音楽漬けの生活が始まったわけですね。大学ではどのような授業を?

    NAOKI:
    クラシックが基本です。でも、学校が終わったらロックバンドとして活動していたので、二足のわらじ状態でしたね。当時は「10代後半から20代前半でメジャーデビューしたい」という目標を掲げていたのですが、大学5年生の時に――

    ――留年していますね。

    NAOKI:
    はい(照笑)。まあここでとあるオーディションに引っかかり、上京のチャンスを掴んだんです。それで、バンドマンではなくボーヤ(ローディー)として働くことを提示されたんですけど、見事両親に反対されまして。渋々大阪に残ったんですが、最終的には「就職してくれ」と言われました。



    ――そこから就職活動を?

    NAOKI:
    いや、両親の紹介でとあるゲームメーカーに入ったんです。僕はゲームにそこまで詳しくなかったのですが、ゲーム音楽を作ることになってしまって(笑)。クラシックをたしなんでいたものの、インスト曲を当時はあまり好んでいなかったこともあり、一度は退職しようとも考えました。でも、なんだかんだで残っていたら、音楽ゲーム事業が本格的に動き始めて。幸いなことにゲーム内の楽曲などをプロデュースする側に回らせていただいて、音楽的にも自由度が高かったし、やっていてすごく楽しかったんです。

    ――そこから音楽ゲーム事業は軌道に乗り、NAOKIさんは売れっ子プロデューサーに。

    NAOKI:
    いやいや、社内にいるとゲームが流行っているという実感もなかったです。ただ、周りが変わっていきましたね。いろんな機材を買ってもらえたし、社内の待遇がどんどん良くなったから。でも、業界全体でいえば、商業音楽って、2000年以降は苦しい局面に立たされてきたわけじゃないですか。

    ――いわゆる“CDの売れない時代”になった。

    NAOKI:
    そう。いち音楽好きとして、この状況がもっと広がることで投資をする人たちから“音楽は金にならない”と思われるのは嫌だなと思ってました。たまたまゲーム業界にいる身としては、ゲームの力を使って音楽を盛り上げていきたいと思ったし、ヒット作でも10万枚いかない時代に、ゲーム内ユニットでリリースしたCDもが万単位で売れてくれたことはうれしかったですね。

    ――なるほど。そんななかで現在のカプコン社に移籍し、『CROSS×BEATS』を立ち上げた理由は?

    NAOKI:
    これから若い人たちにもっといい音楽を作ってもらうために、僕のできることは“ゲームというプラットフォーム”で、活躍できる場をつくることだと思ったんです。それを実現するにあたって、安定しているところにいても向上心や探求心は弱まってしまうばかりだから。カプコンに入社したのは、ここが音楽ゲームとしての下地を全く持っていないところだったからなんです。そういう意味では自分の伸び代も知ることができるだろうと思ったし、更地にビルを建てるような挑戦の苦しみや楽しさを味わいたかった。

    ――刺激が欲しかった、という面もあると。

    NAOKI:
    そう。だから僕のミッションは音楽ゲームに新規参入するカプコン、音楽ゲームビジネスを成功させることだったんです。

    ――そして第一弾として開発したのがiOS版の『CROSS×BEATS』ですね。タッチパネルで触れることを前提としたUI設計は、アーケード化を前提として開発したものなのでしょうか。

    NAOKI:
    ゆくゆくは、という気持ちはありましたが、まずは時代の求めているニーズがスマートフォンであることは間違いなかったので、そこからやってみるのはアリかなと考えたんです。一方でAndroidに関しては、色んな端末やOSが出て、どうしても誤差が生まれてしまっていたので、いまだペンディング状態で。

    ――ゲームの性質上、数コンマずれてもダメですからね。

    NAOKI:
    はい。ただ、ここで二の足を踏んでも仕方ないと思ったので、アーケード化を進めることになりました。

    ――ただ、アーケードの音楽ゲームは近年さらに激戦区と化しています。

    NAOKI:
    どのジャンルにも本流となっている場所がありますが、日本の音楽ゲームマーケットにおいては、間違いなくアーケードですからね。カプコンとして音楽ゲームをこれからちゃんとやっていくぞという宣言をするためにも、アーケード進出は必須でした。もちろん、相当苦労していますよ。営業力・運営力・政治力を求められるわけですから。ゲームコーナーに置いてある台数で勢力図がなんとなくわかるので、国盗り合戦みたいなものです(笑)。

    ――数カ月アーケード稼働してみて、現状の手応えはどんな感じですか。

    NAOKI:
    やはりローマは1日で成り立たないなと。積み上げ、積み重ねの中でそのブランドができてきて、お客さんとの信頼も形成されるわけですから。一大音楽ゲームを作り上げるために、どれだけの人と金と物を投資したかは身をもって知っているので、現在はその50分の1くらいの段階という感覚です。この段階だと、一大音楽ゲームシリーズと同じクオリティの作品を1作目から作り上げたとしても、結局ブランドがまだ出来上がっていないから、その差で劣ってしまうのは仕方ない。だから、今はもう本当に頑張らなきゃいけないと感じています。

    ――ありがとうございます。続いては音楽面について掘り下げたいのですが、音楽ゲーム用の楽曲って、普通のポップスやクラブミュージックとはちがう尖り方をしていますよね。音楽ゲーム楽曲としてウケる、使いやすいものの特徴とはなんでしょうか?

    NAOKI:
    まず、全体的に派手であることですね。とくにアレンジが派手であること。イントロが静寂から始まるなんていうのは特例を除いてありえません。当然、曲の構成としてAがあったらA´、BからB´、そしてCへ向かわせたいと思うのですが、それだと垂れちゃうんですよね。音楽ゲームの場合、プレイ時間の1分30秒から2分で人に楽しみを感じさせなきゃいけないので、通常なら30秒使うはずのイントロを10秒に縮めるし、そのための「いろは」というものがあるんです。最初は白玉(二分音符や全音符などのロングトーン)でグッといきたいけど、最初から叩かせるために、色んなオブリガートやフレーズを走らせて。しかもプレイヤーに聴こえるようにしなきゃいけないから、そのオブリを前に出したりしないといけないんですよ(笑)。

    ――ノーツを増やすために主旋律以外の音を上げまくるんですね。

    NAOKI:
    そう! でもAメロから派手めに「ゴーン!」と行ってしまうと“サビどうするか問題”があるわけで。だから主旋律は派手にいかずに、アレンジで盛り上げるためにトラックをとにかく積む。それがBメロになってさらに膨らみ、サビで爆発し、間奏に進みます。間奏は歌モノであればあるほど自由が利くので“殺しゾーン”が作れる(笑)。最後に落ち着いて終わるなんてありえないですからね。

    ――どんどん難易度を高くしないといけないですからね。

    NAOKI:
    そういう意味では品のいいアレンジにはどうやってもならないんですよ。トラックがやたらめったら入っていて、リフもいっぱい走っていて、しっちゃかめっちゃかで……(笑)。でも、ゲームデータを作る人間のことを考えると、タッチする要素を曲の中においてあげないといけないから仕方ない。それはボス曲などの高難易度であればあるほどそうで。



    ――逆に、回復譜面はどういう意図でつくっているのでしょうか。

    NAOKI:
    譜面チェッカー的な役割の人がいて「これ以上激しくするとモチベーションが下がる」みたいなことを判定するわけです。あと、“殺しゾーン”を作りたいけど全体のノート数を上げれないときに作ることもありますね。

    ▼NAOKI MAEDAプロフィール


    ゲームプロデューサー兼ミュージックプロデューサー。
    音楽ゲームの革命・進化・革新を掲げ、多数の音楽ゲームを手掛ける一方で、音楽アーティストとしても多数の名曲を残す等、個性と才能を発揮しマルチに活躍中。
    現在、カプコン初の本格音楽ゲームアプリ『CROSS×BEATS』と、アーケード向け本格音楽ゲーム『crossbeats REV.』(クロスビーツ レヴ)のプロデューサーを務める。

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    2016.02.02

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