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  • 「自分の曲で2万5000人が盛り上がっていると、頑張ろうと思える」Hiroki Sagawaが語る音楽作家としてのやりがいと苦しみ(後編)
    Flowerや乃木坂46、塩ノ谷早耶香、東京女子流、三代目J Soul Brothersなどを手掛ける音楽作家・Hiroki Sagawa from Asiatic Ochestra(以下、Sagawa)。インタビュー前編では切なくキャッチ―なメロディを多く生み出す彼のルーツや信念に迫ったが、後編では楽曲制作の過程についてインタビュー。制作のうえでの準備や手順、使用機材やスケジュール、楽曲が届いたあとのことなどについて、真剣に語ってもらった。

    取材・文:中村拓海
    写真:下屋敷和文


    ――作曲家としての個性、という話もありましたが、一方のアーティストの個性はどこまで活かそうと考えていますか?

    Sagawa:
    やり方としては、まずは一通り、そのアーティストの楽曲を聴きます。そして、そのなかで自分ができることを探すんです。僕ができないことをやろうとしても、それを専門にしている人には絶対に勝てないし、自分のスキルのなかでできる、そのアーティストに見合ったものを提供するように心がけていて。そのことで、結果として自分の色も出てくる、ということです。

    ――実際の作曲はどんな風に進めるのでしょうか。

    Sagawa:
    例えば締め切りが1週間だとして、前半は楽器をほとんど触らず、頭のなかで考えます。常にそのアーティストのことを考えるモードではあるんですけど、わりと断片的に、「こういうものがいいかも」と思ったら紙にメモしたり、テープレコーダーに録音したりして、なんとなく枠組みを作っていくんです。そうすると時間も迫ってきますから、よしやろうと(笑)。もちろん、スケジュールが間に合う範囲で、ちゃんとやります。

    ――そのときにはイメージが固まっているから、実制作はスムーズだと。

    Sagawa:
    そうですね。なぞり書きくらいはできているから、それをDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)に向かって分析していきます。このメロディが何度の音になっていて、テンションはどうなのか、流れはどうなるか……と。メロディには結局、正解がないので、いいのか悪いのかは分からない。なので、最終的には自分が美しいと感じるもの、内面的な美意識に素直になって決めていきます。理論で分析しつつ、最後は感覚に任せるというか。

    ――なぞり書きしたものを、一度理論に当てるんですね。

    Sagawa:
    特にサビなんかは、思いきり当てますね。言ってしまえば、CMで流れるのは全部サビですから、当然、重視します。サビが8小節あったらどういう処理をするか、ということを一番に置くというか、時間をかけるんです。

    ――なるほど。音の探りは、基本的に鍵盤でしょうか?

    Sagawa:
    鍵盤とギターですね。トラックから先行する曲もあって、その場合はAuto-Tuneで。Auto-Tuneって、歌を入れるとしっかり音程がそろうから、リードする鍵盤の代わりになる。頭のなかに鍵盤を思い浮かべながら歌う、という作業はよくやります。

    ――トラックから作る曲があるのは意外でした。

    Sagawa:
    例えば「花火」(三代目J Soul Brothers)がそうですね。最初から頭のなかで考えていくと、コードはいくらでも置き換えられちゃうんです。トラック先行だとある意味決め打ちになって、「このなかで最大限の素敵なものを作ろう」という発想になるので、メリットも大きいです。

    ――いちど枠を作ってしまうと。ちなみに、今はどんな機材を使っていますか?

    Sagawa:
    DAWはAbletonのLiveをメインで使っていて、Pro Toolsがあって、という感じです。わりとうちでレコーディングをすることもあって、そういうときはエンジニアさんを呼ぶこともあるので、一応。自分でもちょこちょこ触る程度で、主にはLiveですね。たまにLogicとか。ギターは生で入れたりするのでマイクプリだったらAvalon VT-737、コンプだったらUreiの1176とか。

    ――選ぶ基準は?

    Sagawa:
    音ももちろんあるんですけど、僕は昔からわりとカタチから入るタイプなんですよね。作家活動を始めるにあたって、まずほしかったのはガンダム感というか、コックピット感というか(笑)。そういうものに憧れていて、ちょこちょこお金を貯めては、DTMのデスクなんかを買ったりしていて。そういうこともモチベーションにつながっていきますからね。

    ――なるほど、コックピット化したいと(笑)。

    Sagawa:
    使いこなせるだけのスキルも、ちゃんと磨かなければいけないですけどね(笑)。ただ、そういう夢みたいなものがあって、ちょいちょい買っているから、なんだかんだ言って機材は増えてきました。


    ――Sagawaさんがおすすめする機材/プラグインは?

    Sagawa:
    Nexusはおすすめですよね。あとは、これからやり始める人だったらNATIVE INSTRUMENTSのKOMPLETEは持っておくべきだと思います。いろんなピアノもベースも、シンセも入っているし、色々な方が使っていますから。とりあえず持っておくなら、KOMPLETEとNexusはとても自分的にオススメです。

    ――後輩の作家さんに「Sagawaさんみたいな音が出したい」と言われたら?

    Sagawa:
    そんな人いないと思いますけど、音階の部分だったら、ペンタをやったほうがいいよ、と(笑)。機材で言うのであれば、AvalonのVT-737でしょうか。インディーズでやっていた初期に買った機材で、チャンネルストリップなのでマイクプリ、コンプとEQが全部セットになっているので、録りがしっかりするんです。当時よくしてくれたエンジニアさんに勧められて、「どうせなら自分もちゃんとした機材が買いたい!」と思って買ったもので、やっぱりいいものだから、今でもちゃんと使っています。アコギの録りなんかは自分の家でやるので、こういうものが1台あるとありがたいんです。ソフトがメインになっても、こういう機材が意外に重要だったり。先ほどの話に絡めると、何より見た目がカッコいいから、テンションが上がるんですよね。見ているだけで「作曲がんばろう」と思えるというか。

    ――パッと見の“プロっぽさ”もいいですね。

    Sagawa:
    そうなんです。実際、音楽をやっていない友だちに「これ、プロっぽくない?」なんて聞いたりしていましたからね。そういう感覚も大事だと思います。

    ――これから先、やってみたいことについても聞かせてください。

    Sagawa:
    「やってみたい」というより、こういう要素を取り入れてみたい、というものが多いですね。街で音楽を聴いていても、例えばバンドで打ち込みモノも増えてきているし、「ああ、こういうものもやってみたいな」と思います。また、昔バンドをやっていたこともあって、最近はギターをちゃんとやりたい、とも思っています。なので、毎日練習していて、街中で聴いたカッコいいフレーズに耳が行ったり。

    ――それはロックギターですか?

    Sagawa:
    そうですね。ロック、ブルース、そのあたりです。


    ――若手の作家さんにアドバイスもいただきたいのですが、最初にどんなことを伝えたいと思いますか。

    Sagawa:
    しぶとさを持ってほしい、と思います。例えば、コンペでなかなか採用されないという人もいると思うのですが、それでも萎えないで続けてほしい。これは本当に思います。気分転換も大事なんですけど、そのまま音楽から遠ざかってしまったら意味がない。適度に気分転換もして、またデスクに向かって、同じようなことをひたすらやり続けること――作家になるために何かひとつ大事なことはと言われたら、やっぱり「続けられること」です。音楽を仕事にするのは楽しいけれど、辛いこともけっこうあります。いくつも案件を掛け持ちできるのはうれしいけれど、実際にやってみたら辛かったり。メロを考えていて、煮詰まってしまって気持ち悪くなってしまうこともあります。だから、“産みの苦しみ”に耐えてしぶとく続けるタフさが大事だと思うんです。

    ――そうしてタフな仕事を続けていて、気持ちが上がる瞬間とは?

    Sagawa:
    例えば、先日も三代目J Soul Brothersのライブに呼んでいただいたんですけど、そこで「花火」が流れるわけじゃないですか。そうすると、いつも本当に不思議な気持ちになるんです。自分が作った曲で、2万5000人の人が“うぉー!”と盛り上がってくれている。そういう光景を見ると、辛いことも乗り越えられるというか、次に向けてがんばろうと思えますね。あとは、コンビニでふと自分の曲を聴いたときとか。

    ――例えば、ライブで自分が思っていたイメージと違う、という時もあるでしょうか。

    Sagawa:
    いい意味でありますね。僕の曲でありながら僕の曲じゃないというか、三代目J Soul Brothersの曲になっていたり。アーティストさんの個性が入って、自分の感性がこういう風に化けるんだ、といういい刺激がもらえることは多いです。

    ――ちなみに、基本的な作曲スケジュールはどんな感じですか?

    Sagawa:
    僕は“朝型にしたい夜型”なんです。朝起きて、仕事して、夜寝るってしたいんですけど、気づくといっつも夜型になってしまってるという(笑)。その中でも仕事して、息抜きに動画みて、またやっての繰り返しです。夜、たまに散歩に出たり。

    ――曲を作る時間帯が内容に影響する、なんて話も聞きますね。例えば、朝に作ると明るい曲、夜ならメロウな曲みたいな。

    Sagawa:
    だから僕の曲は暗いんですね!そういうことだったのかと、今気づきました(笑)。

    ▼プロフィール

    Hiroki Sagawa
    2015年
    乃木坂46「命は美しい/ 作曲」(2015年3月18日)
    三代目J Soul Brothers「C.O.S.M.O.S.~秋桜~/作曲」(シングル「PLANET SEVEN」2015年1月28日)

    2014年
    三代目J Soul Brothers「C.O.S.M.O.S.~秋桜~/ 作曲」(シングル「C.O.S.M.O.S.~秋桜~」2014年10月15日)
    三代目J Soul Brothers「冬物語/ 作曲」(アルバム「BLUE IMPACT」2014年1月1日)
    Flower「太陽と向日葵/ 作曲」「白雪姫/ 作曲」(アルバム「Flower」2014年1月22日)

    2013年
    三代目J Soul Brothers「花火 / 作曲」(テレビ朝日系・お願い! ランキングED テーマ)
    三代目J Soul Brothers「冬物語/ 作曲」(シングル・2013 年10 月30 日)
    ハウステンボス・光の王国編CM ソング日本テレビ系・PON! ED テーマ

    Flower「太陽と向日葵/ 作曲」(シングル「太陽と向日葵」2013年8月7日)
    Flower「白雪姫/ 作曲」(シングル「白雪姫」)
    Flower「白雪姫(orchestra mix)/ 作曲」(シングル「秋風のアンサー」(2013年8月7日)

    2012年
    三代目J Soul Brothers「花火 / 作曲」EXILE TRIBE「2013 SUMMER BEST (mu-mo 配信期間限定 )
    テレビ朝日系・お願い! ランキング2012年8月度ED テーマ

    【Twitter】
    https://twitter.com/hiroki_sagawa
    【アメーバブログ】
    http://ameblo.jp/hiroki-sagawa/




    2016.04.19

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